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原題 The Fighting Temptaitions
監督 ジョナサン・リン
出演 キューバ・グッディング・Jr.,ビヨンセ・ノウルズ,マイク・エップス,ラターニャ・リチャードソン
オリジナリティのかけらもない映画,と言ってしまえばそれまでなんですが,にもかかわらず非常に楽しめる映画です.
もっとも,単館上映系の芸術映画志向の方にはお勧めできません.この映画はあなたの嫌いな,ハリウッドの典型的なB級商業映画です.
ニューヨークで詐欺まがいの行為を繰り返して世を渡ってきた小ずるい主人公が,大叔母の葬儀に久しぶりに故郷の田舎町に帰ります.思いもかけぬ遺産を相続できると知って,彼は大喜びしますが,それには一つだけ条件がありました.教会の聖歌隊のリーダーとなり,ゴスペル大会で優勝しなければならないのです.一部の教会員に反発をよそに,彼は持ち前の口のうまさでメンバーを集めます.私生児を持つクラブの歌手,文字どおり「バーバーショップ・スタイル」*1 のハーモニーを聞かせてくれる床屋の常連たち,飲んだくれのピアニスト,そして囚人たちまで・・・
たとえば,落ちこぼれのスポーツチームが,異色のメンバーの奇想天外な活躍でどこぞの大会で優勝を争う,なんてのはスポーツ映画の定番中の定番でしょう.話を音楽,それもゴスペルの大会に限ったとしても,「天使にラブソングを2」という傑作がありました.
また,キューバ・グッディン・Jr.演ずるところの「調子がよくて自己中心的,口から出まかせでその場をしのぐ」主人公像は,これまたコメディ映画ではよく出てくるキャラクターです.主人公が「心の底ではお人好し」で,最後には他者への愛に目覚めるというところに着目すれば,マイケル・J・フォックスやマシュー・ブロデリックの若い頃の役柄を連想させますし,そもそも,その場しのぎの嘘のために無駄な苦労を背負い,七転八倒するというのは,コメディの王道パターンでもあります.
言ってみれば,この映画には何らの驚きも存在しません.冒頭の10分ほどを見ただけでエンディングのありようまで想像がつき,その想像が大幅にはずれることはありえないでしょう.
にもかかわらず,この映画は(傑作と言うには難が多すぎるかもしれませんが)愛すべき佳作に仕上がっています.
その功績はひとえに劇中で歌われる歌に帰せられます.
ヒロイン役のビヨンセを初めとして,フェイス・エヴァンス,シャーリー・シーザー,オージェイズ,メルバ・ムーア,アンジー・ストーン,T−ボーン,リル・ゼイン,モンテル・ジョーダン,メアリー・メアリー,アン・ネズビーなどなど,ブラック・ミュージックが好きな人なら垂涎ものの豪華なラインナップ.もっとも私はそちら方面にはうとくて,この中で知っていたのはシャーリー・シーザーとオージェイズくらい*2 でしたが,それでも充分楽しめました.
特によかったのは,オージェイズがアカペラで歌うポール・サイモンの"Loves Me Like a Rock"*3,途中でラップが入ってくる楽しい曲"To da River",それにコンテストの参加曲で感動的な"He Still Loves Me".
とくに "To da River" は,各人が興に乗って掛け合いで歌うという設定なので,一人一人の反応が面白く,歌そのものだけでなく画面も変化に富んで飽きません.
ただ,「歌えない」主役のキューバ・グッディン・Jr.を目立たせなければいけないということで,聖歌隊が歌っている場面で,ちょこまか動いている彼をカメラが抜くのはちょっと煩わしい感じです.「とっておきの」バク転もブレイクダンスも歌の素晴らしさに比べるとみすぼらしいだけです.ただし,その分ドラマ部分では(定型ではありますが)愛すべき小悪人をみごとに演じていると思います.*4
これが映画の初めての出演のビヨンセも,なかなか頑張っています.役柄は典型的な「添え物の」ヒロインなのですが,人気歌手の映画界進出のスタートとしては,彼女中心の映画を無理に作ろうとするよりも,この方が正解だったでしょう.彼女の本領といえる歌の方でも(もちろんメインを張ってはいますが)そうそうたるメンバーが揃っているだけにわりと控えめで,先輩たちを立てているような感じがして好感が持てます.*5
監督のジョナサン・リンは,傑作「いとこのビニー」を初め,数々のコメディ映画を撮っているベテランですが,基本的には人気者のコメディアン主導の映画をまかされる職人監督のようです.そういう意味では,この映画は主演のキューバ・グッディン・Jr.がそれほど強烈なキャラクターの持ち主でないため,本領を発揮できなかったのかもしれません.
それから,敵役の意地悪なお婆さん(!)役を怪演するラターニャ・リチャードソンはサミュエル・L・ジャクソン夫人だそうで,(いるかどうか知りませんが)この二人の娘に恋した男は大変だななどと,どうでもいい事を考えてしまいました.この両親のもとに結婚の許しを得に行くのには,なまなかな度胸では足りないでしょう.
*1 バーバーショップ・スタイルについてはここ.日本で言えば,ダークダックスとかそんなものと思ってください.
*2 知っていると言っても,有名な持ち歌を聴いたことがある,という程度です.
*3 これって,歌詞を意識したことなかったんですが,神を讃える歌だったんですね.
*4 もっとも,私は彼のファンで,この映画を見た一番の原因が彼の主演だったので,贔屓目かもしれません.
*5 それに,歌唱力はともかくビジュアル的には今いちな女性出演者の中では,彼女は群を抜いて美しく,彼女が画面に出て来るとほっとするという面はあります(おい!).
監督 ジョナサン・リン
出演 キューバ・グッディング・Jr.,ビヨンセ・ノウルズ,マイク・エップス,ラターニャ・リチャードソン
オリジナリティのかけらもない映画,と言ってしまえばそれまでなんですが,にもかかわらず非常に楽しめる映画です.
もっとも,単館上映系の芸術映画志向の方にはお勧めできません.この映画はあなたの嫌いな,ハリウッドの典型的なB級商業映画です.
ニューヨークで詐欺まがいの行為を繰り返して世を渡ってきた小ずるい主人公が,大叔母の葬儀に久しぶりに故郷の田舎町に帰ります.思いもかけぬ遺産を相続できると知って,彼は大喜びしますが,それには一つだけ条件がありました.教会の聖歌隊のリーダーとなり,ゴスペル大会で優勝しなければならないのです.一部の教会員に反発をよそに,彼は持ち前の口のうまさでメンバーを集めます.私生児を持つクラブの歌手,文字どおり「バーバーショップ・スタイル」*1 のハーモニーを聞かせてくれる床屋の常連たち,飲んだくれのピアニスト,そして囚人たちまで・・・
たとえば,落ちこぼれのスポーツチームが,異色のメンバーの奇想天外な活躍でどこぞの大会で優勝を争う,なんてのはスポーツ映画の定番中の定番でしょう.話を音楽,それもゴスペルの大会に限ったとしても,「天使にラブソングを2」という傑作がありました.
また,キューバ・グッディン・Jr.演ずるところの「調子がよくて自己中心的,口から出まかせでその場をしのぐ」主人公像は,これまたコメディ映画ではよく出てくるキャラクターです.主人公が「心の底ではお人好し」で,最後には他者への愛に目覚めるというところに着目すれば,マイケル・J・フォックスやマシュー・ブロデリックの若い頃の役柄を連想させますし,そもそも,その場しのぎの嘘のために無駄な苦労を背負い,七転八倒するというのは,コメディの王道パターンでもあります.
言ってみれば,この映画には何らの驚きも存在しません.冒頭の10分ほどを見ただけでエンディングのありようまで想像がつき,その想像が大幅にはずれることはありえないでしょう.
にもかかわらず,この映画は(傑作と言うには難が多すぎるかもしれませんが)愛すべき佳作に仕上がっています.
その功績はひとえに劇中で歌われる歌に帰せられます.
ヒロイン役のビヨンセを初めとして,フェイス・エヴァンス,シャーリー・シーザー,オージェイズ,メルバ・ムーア,アンジー・ストーン,T−ボーン,リル・ゼイン,モンテル・ジョーダン,メアリー・メアリー,アン・ネズビーなどなど,ブラック・ミュージックが好きな人なら垂涎ものの豪華なラインナップ.もっとも私はそちら方面にはうとくて,この中で知っていたのはシャーリー・シーザーとオージェイズくらい*2 でしたが,それでも充分楽しめました.
特によかったのは,オージェイズがアカペラで歌うポール・サイモンの"Loves Me Like a Rock"*3,途中でラップが入ってくる楽しい曲"To da River",それにコンテストの参加曲で感動的な"He Still Loves Me".
とくに "To da River" は,各人が興に乗って掛け合いで歌うという設定なので,一人一人の反応が面白く,歌そのものだけでなく画面も変化に富んで飽きません.
ただ,「歌えない」主役のキューバ・グッディン・Jr.を目立たせなければいけないということで,聖歌隊が歌っている場面で,ちょこまか動いている彼をカメラが抜くのはちょっと煩わしい感じです.「とっておきの」バク転もブレイクダンスも歌の素晴らしさに比べるとみすぼらしいだけです.ただし,その分ドラマ部分では(定型ではありますが)愛すべき小悪人をみごとに演じていると思います.*4
これが映画の初めての出演のビヨンセも,なかなか頑張っています.役柄は典型的な「添え物の」ヒロインなのですが,人気歌手の映画界進出のスタートとしては,彼女中心の映画を無理に作ろうとするよりも,この方が正解だったでしょう.彼女の本領といえる歌の方でも(もちろんメインを張ってはいますが)そうそうたるメンバーが揃っているだけにわりと控えめで,先輩たちを立てているような感じがして好感が持てます.*5
監督のジョナサン・リンは,傑作「いとこのビニー」を初め,数々のコメディ映画を撮っているベテランですが,基本的には人気者のコメディアン主導の映画をまかされる職人監督のようです.そういう意味では,この映画は主演のキューバ・グッディン・Jr.がそれほど強烈なキャラクターの持ち主でないため,本領を発揮できなかったのかもしれません.
それから,敵役の意地悪なお婆さん(!)役を怪演するラターニャ・リチャードソンはサミュエル・L・ジャクソン夫人だそうで,(いるかどうか知りませんが)この二人の娘に恋した男は大変だななどと,どうでもいい事を考えてしまいました.この両親のもとに結婚の許しを得に行くのには,なまなかな度胸では足りないでしょう.
*1 バーバーショップ・スタイルについてはここ.日本で言えば,ダークダックスとかそんなものと思ってください.
*2 知っていると言っても,有名な持ち歌を聴いたことがある,という程度です.
*3 これって,歌詞を意識したことなかったんですが,神を讃える歌だったんですね.
*4 もっとも,私は彼のファンで,この映画を見た一番の原因が彼の主演だったので,贔屓目かもしれません.
*5 それに,歌唱力はともかくビジュアル的には今いちな女性出演者の中では,彼女は群を抜いて美しく,彼女が画面に出て来るとほっとするという面はあります(おい!).
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