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この組織の,過去そして現在のメンバー全員が,この場所を『ホーム』と呼んできました.たくさんの伝統が,たくさんの過去が,そしてたくさんの思い出がここにあります.思い出の素晴らしいことは,それを世代から世代へと伝えられることです.
来年には変化があります.私たちは道の向こう側に移動します.それでもニューヨーク・ヤンキーズにはいくつか決して変わらないものがあります.誇り,伝統,そして何よりもまず私たちには世界で一番のファンがいます.
あなたたちファンに,この球場から思い出を持って行って,それを新しいヤンキースタジアムでの新しい思い出に付け加え,世代から世代へと伝え続けていってほしいと思います.そこで,全組織を代表して,今このときに礼をつくしたいと思います,世界一のファンに.
不覚ながら,デレク・ジーターのスピーチに,ちょっとぐっと来てしまいました.最初,大まかな意味しか聴き取れなくて,ネットのテキストを読んだのですが,感動的なスピーチです.*1 あまりにも素晴らしすぎてとうてい本人が書いたと思えず(おい!),ヤンキーズの広報かスピーチライターの手になるものだと思うのですが,そう考えてもその素晴らしさは色褪せません.
野球というスポーツの魅力,他のスポーツに人気の面では抜かされたかもしれませんが,文化としてのスポーツという側面では(まだまだ)フットボールやバスケットボールに比して一日の長があることを思い起こさせるに足る内容です.
ヤンキースタジアムの最後の試合,MLBはこの試合以外のすべての試合をデーゲームにして,この試合だけに注目を集めたそうです.プレイオフ争いをしているチームもある中,その蚊帳の外の試合を特別扱いするのはいかがなものか,としかめつらしく思う一方で,そうあるべきだと思ってしまうのも,ヤンキースタジアムの持つ歴史の重みのせいかもしれません.
ヤンキースタジアムは「ルースの建てた家」であり,ゲーリッグが涙の引退式を行い,レジー・ジャクソンがワールドシリーズで3打席連続ホームランを打ち,ジーターが観客席に飛びこんで顔面を強打した,まさに野球の歴史が作られた場所です.*2
そういった意味では,ヤンキースタジアムの最後の夜は,語り継がれるにふさわしい夜だったように思えます.ジーターの言葉を借りれば,「パーフェクト・イブニング」.
皮肉なことに,ヤンキースタジアム最後のシーズンにチームが低迷を極めたという事実そのものが,この夜を完璧な夜にする一助となりました.
仮にプレイオフに進出したとしたら,この試合はヤンキースタジアム最後の試合にはならず,レギュラーシーズン最後の試合としてセレモニーを行なっても中途半端な感じは否めなかったでしょう.そしてプレイオフに入れば,そこは「負けたら終わり」の世界です.「最後の試合」という感慨に「敗北の苦み」が混じるか,最悪の場合,「最後の試合」が後になってあれがそうだったとわかることもあり得ます.ワールドシリーズ優勝でヤンキースタジアムの幕を閉じるというのが最高のシナリオなのでしょうが,そうなった場合,その試合の思い出には優勝の喜びという「不純物」が入りこんでしまいます.
やはり,レギュラーシーズン最後の試合がヤンキースタジアム最後の試合というのは最高の結末だったと思います.*3
とりあえず,少しの間だけアンチヤンクスであることを忘れ,「思い出をありがとう」とヤンキースタジアムに言ってあげたい気分.*4
それにしても,こんなふうに観客たちにその最期を見守られた幸せな球場はあまり記憶にありません.同じニューヨークにあったエベッツフィールドは,チームが街を出て行くという経緯はあったものの,その最後の観客は6700人しかいなかったそうです.
日本でも古くは川崎球場や大阪球場などは球団移転に伴なっての解体ですから,エベッツフィールドと同じようなものですが,後楽園球場やナゴヤ球場などの最後の試合*5 というのは知っているはずなのに記憶にありません.何らかのセレモニーは行なわれたのでしょうか?
*1 もちろん,ヤンキーズのファンが世界一だというたわ言はともかくとしてです(笑).
*2 ジーターのプレイがヤンキースタジアムだったかどうかは覚えていません.まあ,二分の一の確率だからいいでしょう(おい!).
*3 「優勝しなきゃ意味がない」と勝つことに執着するヤンキーズファンが,こういう「消化試合」に感情を揺さぶられるのを見ることに,アンチヤンクスとしては皮肉な喜びを禁じ得ません.我ながら意地が悪いですね.
*4 もっとも,その「思い出」はリアルタイムのものは少なく,過去の記録映像や書物を通して得た「思い出」にすぎないのですが・・・
*5 ナゴヤ球場は現存して2軍戦などに使用されているらしいので,「最後の試合」というわけにもいかないのでしょうが.
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