JUNK BOX

小説,映画,スポーツなどによってインスパイアされた考えをだらだらと.

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「竜騎手の誇り」ドラゴンファーム2 久美沙織

第1作の「竜飼いの紋章」が今ひとつだったので,その続編には手を出していなかった「ドラゴンファーム」シリーズでしたが,何の気なしに古本屋の百円均一で購入した本書は思いのほか面白く読めました.それで味を占めて最終巻の「聖竜師の誓い」上下巻を期待して読んだのですが,悪くはなかったもののやはり今ひとつの感がありました.

ま,世の中そんなものでしょう.(おい)

ともあれ,三部作は第1話が一番面白く,第2話は中だれ,最後で少し盛り返すという鉄則(?)からはずれた珍しいシリーズでありました.もっとも,これはあくまで私の感想で,誰でも納得できるほど出来不出来の差が激しいと言うわけではありません.人によっては,「竜飼いの紋章」が一番面白かったと考えるかもしれません.

そもそもこのシリーズは,基本的にはあまり私の好みではありません.いかにもライトノベルといった感じの,ステレオタイプな人物設定,予定調和の勧善懲悪物語といった臭みが,出来の悪いアニメを見せられているようで駄目なのです.

まあ,その欠点(?)はこの「竜騎手の誇り」でも同様ではあります.ただこの巻では,主人公の愛竜の子供の出産*1 の描写があり,それがいかにも愛すべきシーンとなっています.それに続く赤ん坊竜の様子も,動物好きの心をくすぐるリアリティに満ちています.私などはそれほどペットに愛着を覚えるタイプでないのですが,それでも心を和ませられました.

さすがに旦那様が鷹匠で,数々の動物と一緒に暮らしているというだけのことはあります.

ただ,そのよさが全体に波及しないのが何とも歯がゆいところで,主人公の想いも薄っぺらなだけに見えてしまいます.

何とももったいない作品.




*1 正確には卵が割れるシーンです.

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「アフリカと白球」 友成晋也

ガーナに海外赴任した平凡なサラリーマンがひょんなことからナショナルチームの監督になり,涙と笑いの体験をする,というといかにもありがちな話*1 ですが,実際に読んでみての感想も,良くも悪くも予想通り.

筆者が(唯我独尊的な思考は気になるものの)野球が大好きで,アフリカにおける野球の普及に真摯に取り組んでいることはわかりますが,叙述が平板なためか,読者(まあ,私のことなんですが)の心を打つところまでは行きません.

このガーナナショナルチームのことはテレビのバラエティ番組(奇跡体験!アンビリバボー)が取材してそれなりに話題になったようで,本書の刊行もその一環なのでしょうが,テレビのバラエティ番組の与えてくれる感動の域を超えていないように思えるのは,私の僻目でしょうか.

同じ海外での野球体験話なら,「イタリアでうっかりプロ野球選手になっちゃいました」の方が全然破天荒で面白いと思います.

まあ,一選手と監督との差,曲がりなりにもプロ野球が存在している地でプレーを楽しむ身と,野球未開の地での普及活動という目的意識(というか,前者にはそんなものはないのですが)の差が大きいのでしょう.

ガーナで野球の普及活動にいそしんできましたというと,講演の依頼も来るかもしれませんが,イタリアでプロ野球の選手になりましたというのは,酒飲み話のネタにしかならないでしょう(と言っても,飛び切りのネタですが).

本書で唯一面白かったのは,日本のテレビ番組が派遣した「臨時コーチ」の高橋慶彦の言動,ちょっとした言葉の行き違いから筆者と険悪な雰囲気になったようですが,現役時代にオーナー(の息子?)にたてついたという話を思い出してしまいました.

現役を退いてもう何年にもなるのに,なかなか角が取れないようで,「それでこそ一流のプロ野球選手」と嬉しくなってしまいました.




*1 もっとも,冷静に考えるとそんな経験をする個人はめったにいないでしょうが.しかし,ストーリーラインとしてはステレオタイプです.

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「舞姫 テレプシコーラ」第2部2 山岸凉子

久しぶりに大きな書店に行きましたら,「舞姫 テレプシコーラ」の新刊が出ていました.何となく1年に1巻のペースで刊行と思いこんでいたので,これは嬉しい驚きです.

もちろん,中身の方も期待にそぐわぬ出来.相変わらずローザンヌ・コンクールの話が続き,なかなか終わりそうもありませんが,これだけ密度が濃い展開なら,ローザンヌだけで10巻を費やしても文句は言いません.いくらでも描いてください,先生に一生ついていきます(でも,ホラーマンガは買わないけど).

謎の美少女(?)ローラ・チャンの存在,そしてその正体*1 も気になりますが,今回私が最も心を動かされたのは,コンテンポラリーと創造性についての話と,ローラ・チャンがその姿を髣髴とさせたシルヴィ・ギエムの話です.

コンテンポラリーとは,このマンガの中でも説明されていますが,簡単に言えば,クラッシクバレエと対比される現代の振付家の作品のことを言います.ま,古典落語に対する新作落語のような存在とでも捉えればいいのではないかと思います.

第1部でも,六花が踊りに対する独創的な想像力に長け,ゆくゆくは踊り手としてよりも振付家の道を歩むのではないかということが暗示されていましたが,このコンクールでも彼女の想像力は羽ばたきます.

しかも,従来の常識(ここではベジャールのボレロの振付)の呪縛から逃れようとするあまり,音楽を無視してしまったと反省する態度は非常に素晴らしいものがあると思います.観客(読者)を意識して作品を作るというのは,山岸凉子も心がけていることなのでしょう.

また,付き添いの菅野先生のここでの述懐,

日本の学校の 教育自体が 物を作り出すことと ま反対にある
だってみんな ”同じに”が モットーだもの」
(中略)
こうした 風潮で ある限り
新しいものは 生まれない!
でも・・・どんなに 押さえ込んでも
物を作る 少数の 本物は
出てくる!


という言葉は,いつも指摘されるサッカーの日本代表の欠点や,逆にイチローがデビューしたときの監督との確執の話*2 などを思い起こさせます.

そして,シルヴィ・ギエムです.

バレエがお好きな方なら今さらの話なのでしょうが,私はこれまで彼女の踊りを見たことがありませんでした.彼女のことはこのマンガでも言及されていましたし,巻末の対談などでも触れられていたので,名前だけは知っていました.しかし,バレエマンガを愛読しているにもかかわらず,私は本物のバレエが苦手なのです.

しかし,菅野先生に

一人の天才(ギエムのことです.筆者註)が ある壁を越えて みせると
他の人間も 皆その 能力に 目覚める


とまで言われては,やはり興味が湧いてきます.

お手軽ですが youtube で見てみました.

シルヴィ・ギエムのボレロ


すげえ!

正直言って,感動するというところまでは行かなかったのですが,その動きのすごさは素人にもわかります.*3 踊っている最中はそのスリムな体形のせいもあって,中性的な感じだったのですが,アンコールのときはいかにも女性らしい笑顔になるところも good です.機会があったら,もう少し高画質のものも見てみたいと思います.

そして,これはついでですが,ボレロが水戸黄門のテーマ曲と同じリズムだという六花ちゃんの言葉を検証してくださった方がいました.

テレプシコーラ第2部2巻 | クリログ

ラヴェルのボレロ黄門様(Beta)


いやあ,ぴったりですね.素晴らしい!



山岸凉子の作品についての記事

「アラベスク」
「舞姫 テレプシコーラ」
「ヴィリ」
「舞姫 テレプシコーラ」第2部1




*1 ローラ・チャン=須藤空美,同一人疑惑は未だに晴れていません.

*2 ただ,これは前にも書きましたが,個人的にはその信憑性に疑いを持っています.ここでは,いかにもありそうな話として例に挙げました.

*3 って,本当はそのすごさの100分の1もわかっていないのでしょうが.

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「黒衣の女王」グイン・サーガ126 栗本薫

この巻はほぼ全編が,イシュトヴァーンに求婚されたリンダの微妙な女心の綾を描いていると言っても過言ではありません.

と書けば,ここのところの「のんびりグイン・サーガ」に辟易している身としてはどうしても辛口になるのは仕方のないところ.

もちろん,この二人の関係が中原に影響すること大であることはわかっていますが,こんなところはチャッチャとすましてくれと言いたくなる感じです.

そもそも,もう忘却の彼方の出来事ですが,リンダがナリスに心変わりしたときは,こんなに(どうでもいい)心理描写を長々とはやっていなかったように思えます.どちらかと言えば(拍子抜けするくらい)あっさりとイシュトヴァーンを見限ったような気が・・・

すごろくで一回休みをしているような気分.

サイロンで流行っているという黒死病についてとっとと書いてもらいたいというのが本音です.



グイン・サーガについての記事

「もう一つの王国」グイン・サーガ113
「紅鶴城の幽霊」グイン・サーガ114
「水神の祭り」グイン・サーガ115
「闘鬼」グイン・サーガ116
「暁の脱出」グイン・サーガ117
「クリスタルの再会」グイン・サーガ118
「ランドックの刻印」グイン・サーガ119
「旅立つマリニア」グイン・サーガ120
「サイロンの光と影」グイン・サーガ121
「豹頭王の苦悩」グイン・サーガ122
「風雲への序章」グイン・サーガ123
「ミロクの巡礼」グイン・サーガ124
「ヤーンの選択」グイン・サーガ125

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「リンダリンダリンダ」

韓国からの留学生をボーカルに迎えた女子高生の急造バンドが,文化祭で「リンダリンダ」を熱演する,という簡単な紹介を見ると,「スウィングガールズ」あたりの二番煎じと言う印象を与えます.

実を言うと,私はまさにその「スウィングガールズ」の二番煎じを期待してこの映画を見ました.

しかし,その期待はいい意味でも悪い意味でも裏切られた感じです.

DVDのライナーノートには,この映画が「スウィングガールズ」が発表される前から企画されていたこと(つまり,その影響はなかった)と,怠惰な若者が嫌々何かをやらされているうちに次第にそれに夢中になってしまうというパターン(ライナーノートでは「アルタミラ調」とされています)は避けたかったという製作者の言が記載されています.

確かに,この映画をそういったパターンで見ると,脚本に穴がありすぎるように思えます.

たとえば,そもそものきっかけとなった元々のバンドメンバー同士の喧嘩,その原因はちゃんと説明されていませんし,この映画の中では解決もされていません.*1 それまで友達ですらなかった留学生をボーカルに迎えるという,この映画のウリだけのために存在している都合のいいエクスキューズのように見えてしまいます.

そのため,指を怪我した萌,喧嘩相手の凛子の存在は,宙に浮いたまま,最後に至るまで放っておかれます.観客はこの二人がどんな存在であるか,知るすべを持たされません.

それにエンディングを盛り上げるための手つきも,あからさますぎてちょっと興ざめ,リアリティがなさすぎます.

では,この映画は面白くないのかと言うと,そこは微妙.

物語的には何の意味もないシーン*2 の質感はリアリティにあふれています.登場人物たちは個性的で魅力的,特に主人公グループでない萌役の湯川潮音や中島田花子役の山崎優子は,本業である歌を聴いてみたいと思わせるほどの存在感をかもし出していました.ちょっとしか聴けなかった「風来坊」は絶品!

そして何より「ブルーハーツ」の楽曲の持つ力!

この映画の魅力は結局のところそこに尽きるでしょう.

ただ,基本的に「アルタミラ調」のストーリーを是とする私の立場としては,魅力的な素材,魅力的な俳優を無駄に使ったという感じがしてなりません.




*1 とりわけ,仲直りをしようと下手に出る凛子に対する恵の態度はおよそ共感できるものでなく,仲間の二人がそれを(消極的にですが)肯定するのは理解に苦しみます.これって,単に「ハブにしてる」だけでしょ?

*2 いや,意味がないと言うのは言い過ぎで,ストーリーの進行に寄与していないという意味です.

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